データとバスケ

バスケをデータから楽しむブログです。

65,000本以上のデータから、クラッチタイムのフリースロー成功率を調べてみた

フリースローが好きです。試合の序盤こそフリースローは少し退屈にすら感じるシーンですが、緊迫したクラッチタイムにはフリースローは会場全体が息を吞むプレーに変貌します。たった1点の自由に放てるシュートが、文脈によってここまで存在感が変わってしまうことにその面白さがあると思ってます。

ここ最近でも印象的なフリースローがいくつかありました。例えばウインターカップ2020の決勝、仙台大明成 vs. 東山の一戦で東山の米須が最終版に決めて見せた3本のフリースロー。Wリーグ20-21のセミファイナル、ENEOSがデンソー相手に大逆転劇を見せたゲーム1で高田真希が最後に外してしまった2本のフリースロー。どちらもとても記憶に残っています。

さて最近、バスケ界隈では大人気の佐々木クリスチャンネルでもフリースローの話題が扱われていました。この動画を観て「あの緊迫したクラッチタイムでのフリースロー成功率って高いのかな?低いのかな?」と思ったので、Bリーグのデータを調べてみました。*1

ここではB1の過去4シーズン(2016-17から2019-20)のレギュラーシーズン全試合1986試合分のデータを使って、フリースローについて色々と調べてみたいと思います。*2

総試投数と成功率

過去4シーズンにB1レギュラーシーズンで放たれたフリースローの総数は65,904本。その成功率は72.1%でした

クォーター毎

まずはクォーター毎に放たれたフリースローの数とその成功率を見てみましょう。

クォーター 試投数 成功数 成功率
1 11315 8272 73.1%
2 13586 9696 71.3%
3 18044 13107 72.6%
4 22043 15793 71.6%
OT1 870 622 71.5%
OT2 46 32 69.5%

まずですが、クォーターを追うごとに本数が増えているという感覚がなかったので驚きました。第4クォーターにフリースローが多いだろうとはもちろん思っていたのですが、第1よりも第2、第2よりも第3が多いという感覚はなかったので、嬉しい発見でした。

第2クォーターと第4クォーター、それと延長で成功率が落ちていますね。これが誤差の範囲なのかどうかは検定をかける必要があるのですが、それを書きだすとバスケの話から離れてしまうので、興味のある方は別途お話しましょう*3

クォーターを追うごとに成功率が下がる可能性があるとすれば、もちろん先の話のようにプレッシャー、メンタルという言葉に代表されるようなものの影響もあるでしょうし、3Qに成功率が回復しているように見えるのは疲労の影響を想像させます。そう言えばバスケをやっていた頃「疲れているときのシュート練習こそ大事」とよく先生に言われていました。

一方でクォーターを追うごとにフリースローを放つ選手が限られていくことも予想されます。終盤でエースやフリースローの上手い選手にボールを預けるというようなシーンも想像できます。そうするとフリースローの成功率にはプラスに働きそうです。もちろんブースターの盛り上がり、会場の雰囲気、そういった多くのものが上の数値に影響しているでしょう。

クラッチタイム

では本題のクラッチタイムについて調べてみましょう。クラッチタイムの定義は以前に書いたこちらの記事より引用します。

ここではクラッチタイムを以下のように定義しました。ちなみにNBAでもクラッチタイムの基本的な定義は同様のはずです。

4Qの残り5分以降(延長戦までもつれれば延長戦も含む) かつ 得点差が5点差以内 ふたつ目の条件ですが、7点差を5点差につめるシュートはクラッチタイムのプレーではなく、逆に5点差を7点差に拡げるシュートはクラッチタイムのプレーです。そういうイメージです。もちろん5点差を3点差につめるシュートもクラッチタイムのプレーです。

この定義に従ったクラッチタイム中にB1で放たれたフリースローの総数は5,661本で、その成功率は72.2%でした。低くないですね!

ではスーパークラッチタイムだとどうでしょう?これは勝手に私が作った言葉と定義ですが、「4Qの残り1分以降かつ得点差が1点差以内」という超緊迫した場面でのフリースローを見てみましょう。*4

この定義に従ったスーパークラッチタイム中にB1で放たれたフリースローの総数は537本で、その成功率は69.6%でした。70%を割ってきましたね!面白い!

スーパークラッチタイムにフリースローを放った選手達

ついでなので、スーパークラッチタイムにフリースローを放った主な選手たちとその成績を見てみましょう。当然のことながら、スーパークラッチタイムにボールを任されるような選手たちが顔を連ねるはずです。

選手名 試投数 成功数 成功率
ダバンテ・ガードナー 17 17 100%
ジュリアン・マブンガ 15 7 46.7%
ジャスティン・バーレル 12 10 83.3%
辻 直人 12 9 75%
ニック・ファジーカス 10 9 90%
マーキース・カミングス 9 4 44.4%
ライアン・ロシター 9 3 33.3%
岡田 優介 9 8 88.9%
並里 成 9 5 55.6%
ベンドラメ 礼生 8 8 100%
折茂 武彦 8 6 75.0%
川村 卓也 8 6 75.0%
スコット・モリソン 7 1 14.3%
馬場 雄大 7 3 42.9%
ジェフリー・パーマー 6 2 33.3%
ジェロウム・ティルマン 6 5 83.3%
ダニエル・ミラー 6 3 50%
宇都 直輝 6 4 66.7%
喜多川 修平 6 6 100%
金丸 晃輔 6 5 83.3%

ガードナーをファールで止めても結局決められてしまうという事はよく分かりました(笑)

まとめ

フリースローの総数や成功率について詳しくみてみました。あの緊迫したシーンを観たくて、今日も明日もバスケファンをしている気がします。

*1:実は私は中学生の頃にバスケットボールのメンタルトレーニングという書籍を愛読していたのでメンタルの話もしたい所なのですが、それは今回はちょっと置いておきます。

*2:実は本当はもう1試合あって、全部で1987試合なのですが、このゲームのデータだけ別途の取得処理が必要なので、その試合はここでは無視することに決めました。

*3:いつもTwitterで仲良くさせて頂いている小中研究室さんが解説して下さいました

*4:フリースローの1本目が決まって2点差に広がった場合、2本目はスーパークラッチタイムの定義を満たさないこととします。